十九綴

tsudzu-tsudzuri

劄記174

どうも、十九です。
今さっき気づいたことがあります。
私は劄記をするときにいろいろ辞書を見ながらやりますが、
その際に広辞苑と新漢語林は電子辞書を使っているんです。
他の辞書は紙です。漢辞海とか新潮日本語漢字辞典とか。
紙の新漢語林は今の家にはないのですが、
広辞苑は紙のを持ってるんですよ。第六版ですが。
でもずっと電子辞書で言葉を探してました。
紙の方が適当にペラペラ捲って気になる言葉を探すには向いているんです。
でも電子辞書には電子辞書なりの便利さがあります。
逆引きできたり、ある漢字から始まる見出し語を検索できたり、
あと何より単語帳の機能があります。これ便利。
紙の本に付箋を貼るのはどうも気に入らないので。
あとたぶん惰性でずっと電子辞書の方を使ってました。
せっかく紙の広辞苑を持っているのに勿体ないなと思ったので、
今回は紙の方でやっていきます。今回限りかは知らないけど。
そういうことでやってきましょう。




  【嗟来】サライ
  見さげた態度で招き寄せること。
     ―広辞苑第六版より


「嗟来の」という慣用句もあります。
こちらはさげすんで与える食物のことを言うそうです。
「食」は「ショク」ではなく「シ」と読むんですね。
とりわけ「やしなう」「食べ物」の意味の時は「シ」になるそうな。
「嗟」は「咄嗟」「怨嗟」などで地味に見かける字ですが、
「ああ」とか読むこともあります。嗚呼みたいな感動詞です。
その嗚呼と関連するか分かりませんが、
なんか人を見下す感じの発語のニュアンスもあるらしい?です・
「さあ」とか「それ」とか「やあ」みたいな感じかと。
さあ、来い みたいな感じになるんしょうかね。
あまり見下げた感じで食べ物を出すシチュエーションはない気がしますが、
嗟来だけならばそこそこありそうですね。嫌味な上司とか。
それはそうとサライといえばあの歌ですよね。加山雄三とかの。
名前だけは知ってたんですが、ちゃんと聞いたのはつい最近になってからです。
それまではどっかの民謡とかだと思ってました。まさか日本の歌とは。
にしてもサライって本当になんなんでしょう。
調べたらペルシャ語由来とかなんとか。なんでわざわざ…
それでも人気の曲なんですよね。不思議。



  【美哉・妍哉】あなに-えや
  (エ・ヤは感動の助詞)ああ美しいことよ。あなにやし。〈神代紀(上)訓注〉
     ―広辞苑第六版より


随分すごい字を当てますね。なんだこれ。
え・や が感動の助詞なら、あなに はなんなんでしょう。
これは「あなに」の見出し語に付いてる語なので、
それを参照してみましょう。


  【あなに】あな-に
  《感》強い感動の語。ああ、ほんとうに。たとえようもなく。
  万葉集(8)「桜の花のにほひはも―」
     ―広辞苑第六版より


「あなかしこ」とか古語でやった覚えがあります。
「あな」も「ああ」みたいな感じでいろいろ意味する感嘆です。
その「あな」に更に「に」が付いて強い感動を表し、
更に更に感動を表す「え」「や」が付いたのが「あなにえや」。
なんだこれ。感動詞の欲張りセットか。
「マジのガチで本当にアレ」くらいしか言ってない気がします。
それでもって「美しい」ことに特に使われたらしいですよ。
面白いですね。いろんな界隈のオタクやら追っかけが言う、
「マジ無理」がとりわけ推しの尊さについて言われてる感じでしょうか。
なんか違う気がする。まあいいか。昔から語彙力を失う時はあったんですね。



  【螵蛸】おおじ-が-ふぐり
  (祖父おおじ睾丸ふぐりの意)カマキリの卵塊。
  秋の末、樹枝などに産みつけられ、初めは唾のようであるが、
  のち固まって褐色になる。
     ―広辞苑第六版より


なかなかものすごい喩えですね。なぜそれを選んだ。
「ふぐり」は当てられてる字を見て分かるように、
睾丸とか陰嚢のことを指します。だいたい「陰嚢」で「ふぐり」と読む。
オオイヌノフグリ」って植物ありますよね。
よく道端に生えてるちっこくて青い花を咲かせるアレ。
あれも犬の陰嚢ってことっぽいです。
名前は似てるけど「イヌノフグリ」という別の植物があり、
こちらは薄いピンクみたいな花を咲かせて、
果実が犬の陰嚢みたいな形をしてるらしいんです。
でもWikipedia曰くオオイヌノフグリの果実はハート型で、
犬の陰嚢には似ていないらしいです。マジかよ。
あと松ぼっくりの「ぼっくり」もふぐりの意味らしいです。
広辞苑には「松陰嚢まつぼくり」という見出し語で載っています。
昔の人、陰嚢好きすぎじゃない?なぜそれに喩える。
不名誉というか、いろいろかわいそうに思えてきます。



  【似非幸い】えせ-ざいわい
  あてにならないしあわせ。
     ―広辞苑第六版より


あてにならない幸せ。色々と面白いです。
それってどんなやつでしょう。
一応は幸福を感じるけれども満足ではないとか、
ほんの一時しか持続しない幸せだとか、
ズルとかよくないことをした上で得た幸せとか、
そういう感じのことでしょうかね。多分そう。
それにばかり頼るようにはならないように気をつけたいところです。





途中まで筆のノリがそこそこよかったのですが、
最後はなんか失速しました。集中力切れましたね。
だいたいミスタッチも多くなってきたのでそうでしょう。
この頃けっこう頑張ってますし、今日はあまり天気がよくないし、
たぶんこれは状況を見るとけっこうできた方ではないでしょうか。
そういうことなのでもう一踏ん張り作業を頑張ります。
それではまた次回。