十九綴

tsudzu-tsudzuri

劄記223

どうも、十九です。
このごろ天気とか気圧とかが安定しませんね。
低気圧に弱いもんで、雨や低気圧ばっかで微妙な不調が続いています。
でも九州とか長野・岐阜あたりがえらいことになってるらしいですね。
この間も九州とか豪雨の被害が出ていたと思いますが、
こうも天災が続くとどうしようもないですね……
しばらく前の私だったら失礼ながらそれなりに他人事だったのですが、
去年の台風19号のせいで自宅付近が川のようになったのを経験し、
水害の恐ろしさを体験したのでそれなりに他人事じゃなくなりました。
しかし遠くの火事、背中の灸という感じでひとまず自分が大事です。
心の痛むようなニュースとは程よく向き合いましょう。
そういう感じで微妙な調子の中でやっていきます。





  【斧の柄朽つ】おののえくつ
   (述異記に「晋の王質が木を伐りに山に行って、
  仙童の囲碁の一局を見終わらないうちに斧の柄が朽ちているのに驚いて、
  村に帰ると、知人は皆死んでいた」とある故事に基づく)
  わずかな間と思っているうちに、長い年月を過ごすこと。
     ―広辞苑第六版より


斧を使う熟語が出てくる人ってなかなかいない気がします。
私も蟷螂之斧トウロウのおの斧鑕フシツというやつしか知らないし、
後者に至ってはなんか音は覚えてるけど意味は覚えてません。
どうやら首を切る斧と首切りの台を指すそうな。こわい。
そもそも音読みも認知されてない気がしています。
勘がいい人なら「父」が付くことから「フ」と読めそう?


それはそうとしてこの慣用句、超いいっすね。
時間の流れが速いことを指す言葉はまぁそれなりにある気がします。
光陰矢の如し、月日に関守なし、烏兎匆々……
でもこの言葉は「わずかな間と思っているうちに」なんです。
単に速いだけでなく、体感としてはわずかなのがミソです。
というか囲碁の一局を見終わらないうちにえらい時間経ってますね。
囲碁ってそんなに泥仕合になるんでしょうか?
そもそも仙童とかあるので摩訶不思議パワーが働いたのかな。
是非とも流行ってほしいところ。




  【伐性之斧】バッセイのおの
  人の本性を切りそこなうおの。
  女色や僥倖ギョウコウをいう。〔韓詩外伝、九〕
     ―新漢語林より


面白いのがあったのでもひとつ斧いきます。
人の本性を切りそこなうおの。世の中に溢れてますね。
そういうのを表す言葉があることにもだいぶ驚きです。
しかしこれ女色はかなり分かりますが、
僥倖もこれに分類されてるのが面白いところです。
割と有名な熟語ですが、思いがけない幸せのことを指します。
こんなブログ読んでる物好きの方なら知っている語彙だと勝手に思ってますが、
できるだけさまざまな方にやさしいブログでありたいです。
思いがけない幸せとかまぐれに頼りすぎても人ってたやすく腐りますよね。
運も実力のうちとは言いますが、確かにそれはそうです。
一時の勝負で運を引き出せるのも実力に含まれてもいい感じがしますが、
一時でなく継続的な生活や仕事のうちでそれが常に発揮できるかというと別です。
そういった中で幸運を出してしまい、それが自身の能力と勘違いし、
幸運にも地位だけは上のものになってしまうとか。
プライドとかっていろいろ邪魔になることも多いけれど、
屈辱とか失敗を程よく経験して認めていくことで真に成長できるものです。
それがなかなかどうして難しいんですけれどね。




  【徼幸・徼倖】キョウコウ
  まぐれあたりの幸福を求めること。
  また、まぐれあたりの幸福。僥倖。
     ―新漢語林より


ということで「僥」も「倖」も「僥倖」の並びでしか見ませんよね。
強いて言うなら後者は倖田來未に使われるくらいでしょうか。
でもこれまたいい感じの熟語が見つかりましたよ奥さん。
劄記81で似たような「冀幸キコウ」という熟語を紹介しましたが、
こちらの方がよりまぐれを望んでいる意味に限定されている感じでしょうか。
音も僥倖に似ててなんとなくいい感じです。
なんなら名詞として僥倖と同じ使い方もできるっぽいので最高では?
世の中の僥倖を徼倖に取って代わらせましょう。無理です。




  【豪宕】ゴウトウ
  気性が雄大で小事にかかわらないこと。豪放。「―をもって鳴る」


  【跌宕・跌蕩】テットウ
  細事にこだわらず、のびのびとしていること。
  また、のびのびとして大きいこと。雄大
     ―広辞苑第六版より


だいたい似た意味だけど絶妙にニュアンス違う気がするから2つ挙げました。
取り上げたいのは「宕」ですね。これ「愛宕あたご」でしか見たことないです。
その昔、小学生くらいの頃かな?
「日本一低い山は愛宕山」という情報をどこかで得てずっとそれが印象に残っています。
しかも愛宕山って全国にいくつもあるらしく、どれを指すか分かりません。
それらしいのは東京都港区にある愛宕山(標高25.7m)でしょうかね。
しかし昨今のテレビだと大阪府大阪市天保山(4.53m)とか、
宮城県仙台市日和山(3m)とかが日本最低だとよく聞くようになった気がします。
実情はよく分からないのでWikipedia「最も低い山」を参照。


閑話休題それはさておき、豪宕と跌宕の話をしましょう。
閑話休題に「それはさておき」ってルビ振るやつ、やってみたかったんですよ。
どっちも細事にこだわらずのびのびしている様子を表すっぽいですが、
「気性が雄大」と「のびのびとしている」ってけっこう印象違いますよね。
のびのびとしている方の説明に「雄大」とも書かれているので同じだとは思いますが。
その辺を加味すると跌宕の方が好きなんですが、
「跌」は「つまずく」という意味があるのでなんかそこで若干腑に落ちない感あります。
新漢語林を参照すると跌宕は「しまりがなく、ほしいまま。宕は、度をこす。」とあります。
お前そんな意味だったのかよ。広い、度を超す、みたいな意味らしいです。
一方で豪宕は新漢語林を参照しても同じような意味が掲載されていました。
じゃあ使うならこっちの方がいいかな。強盗っぽい音なのがアレだけど。
豪宕な感じになりたいものですね。余裕のある人間になります。




  【陳・老成】ひね
  ①㋐晩稲。おくての稲。〈倭名類聚鈔(十巻本)(9)〉
   ㋑前年以前にとった穀物。旧穀。「―米」
  ②古びたこと。また、そのもの。「―しょうが」
  ③おとなびていること。老成していること。


  【陳ねくれる】ひねく・れる
  《自下一》古びる。ませる。ひねる。
     ―広辞苑第六版より


陳です。中国人の名前とか陳述・陳列・陳腐くらいでしか見ない。
……いや思ったより使うか。いやそうでもない?
いずれにせよなんか面白かったのでぜひ紹介させてください。
手持ちの電子辞書だとどちらも音声でアクセントを確認できる機能に対応していたので、
それなりに一般的な語彙である可能性があります。私は初めて知りましたが。
ひね、そんな言葉があるんだなー。へー。
と思って眺めていたら知らない「ひねくれる」があってびっくりしました。
あれ!?「捻くれる」じゃないの!?と思いましたが、
お互い別の言葉でちゃんと存在しているようです。なんだ。
でも意味が通じる箇所もありますがちゃんと別ですね。語源は同じなのかな。
「陳ねる」という形で使うこともあるようです。
そう言われれば「ひねた子供」とか聞いたことあるようなないような。
「老成る」を「ませる」と読ませることもあるらしいですし、
ちゃんと大人になるというより大人っぽい雰囲気を出すという意味の方が強いのかな?
すると老成する「ひねる」に加えて、
子供らしさからちょっと外れた、捻った感じとして「ひねる」がしっくりきます。
これはなかなか面白い言葉を知りました。たのしい。





めっちゃ紹介しちゃいました。列記して紹介したのもあるけれど、
その上で5項目として取り扱っているのでなかなかのボリュームになりました。
記事を書いていると文字数をカウントしてくれるんですが、
それがいま4025字になっています。
ルビ振るための記号とかそういうのも含めてですが。
参考までにボリュームが少ないと2000~25000字くらい、
普通からちょっと多めが2500~3500字くらいです。
4000というのはそうそうノリノリにならないと至らない文字数なのです。
原稿用紙10枚分ですか。そりゃけっこう書いたな。全部が文じゃないですが。
そういうことで後書きはこんなもんにしておきましょう。また次回。